広報誌GREENS VOICE vol.6  (2021.March発行)

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●GREENS VOICE vol.6(表)・(裏)

 

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谷口たかひささん インタビュー全文がここから読めます

 

日欧における若者の意識の違いは、実は大人の差

 

日欧における気候変動に対する温度差とは

 

―― イギリス留学後、ドイツに移住、2019年9月に帰国されて、気候変動の問題を中心に講演活動に注力されていますが、その原動力は何なのでしょうか?

谷口 イギリスやドイツでは、大人も子ども多くの人たちが気候変動の問題に確実に危機意識を持っています。ところが日本では、残念ながら危機感以前に関心を示す人すら少ないという状況にあります。要は、みんな「知らない」といっても過言ではありません。そこで、まずは「みんなが知っている」という状態をつくりたいというのが、いまの僕の思いです。とはいえ、「知らない人が多い」ということには希望も感じています。というのも、「知っているのに行動しない」のであれば絶望的ですが、「知らない」のであれば伸びしろがある!! だから、そのポテンシャルを信じて、「みんなが知れば、必ず変わる」という思いで活動しています。

 

―― ヨーロッパでは、子どもたちを含めた若い世代も気候変動の問題に立ち上がっていますよね。日本との違いはどこにあるのでしょうか?

谷口 1番の違いは、彼ら彼女たちが自分のことを「子ども」だと認識していないことだと思います。その背景には、大人たちが「子ども扱いしない」という環境があげられます。だから、社会の一員としての自覚が生まれるのではないでしょうか。同時にそれは「大人の差」でもあります。「子どもは大人の背中を見て育つ」といわれますが、ヨーロッパの大人たちは「社会は変えられる、悪ければ是正すればいい」という認識を持って行動しています。日本とヨーロッパでは、そんな「大人の差」も、そのまま反映されているように感じています。

 

―― そのような若い世代の象徴ともいえるのが、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんですね。彼女の呼び掛けで始まった「Fridays For FutureFFF:未来のための金曜日)」をはじめ、何度かお会いになっているとのことですが、その印象は? 

谷口 「グローバル気候マーチ」をはじめ、4回ほどお会いしていますが、目の鋭さが印象的でしたね。「サムライ」のような目をしていると感じました。侍が1対1で戦う際には「いずれかが死に至る」ことを覚悟しているといわれますよね。そのような「覚悟」というか、「腹を括る」という姿勢を感じさせてくれました。

 

「経済成長」の真の目的は 何のための成長か

 

―― 気候変動の解決に向けて「CO2排出量の削減」が叫ばれていますが、その一方で耳にするのが「経済成」への懸念です。これについては、いかがお考えですか?

谷口 「経済成長」といいますが、この意義と目的について、ちゃんと説明できる人はほと

んどいないような気がしています。よく例に出されるのが、GDP。国内でどれだけのお金

が回ったかを表す指標で、低成長といわれながらも日本のGDPは微増しています。にもか

かわらず、国民の所得は減る一方。例えば、お父さんの給料が減って、お母さんがパートに

出るというのは、よくあるケースですよね。でも、そのためにお金を払って子どもを預けな

くちゃならない。すると、お金が回って、GDPが増える。でも、それは経済成長とは言え

ますか。経済成長とは何か⁈ その真の目的を考えていけば、僕は脱炭素と二律背反する問

題にはならないと考えています。

 

―― 「経済成長」の本来の目的は、皆が豊かに、幸せになること。それが、実際はGDPとか株価をとい指数で測られ、それを向上させることが目的化されてしまっている。「経済成長」が有する本来の目的に原点回帰するためにも、気候変動の問題に取り組んでいく必要があるこをいうことですね。

谷口 そういうことです。実際は多くの国民の所得や貯蓄は右肩下がりというのが現状。

そこで、まずは「経済成長って何が目的だったんだろう⁈」、「経済って本当に成長し続けな

ければいけないの?」というところから、みんなで認識を共有する必要があると思っていま

す。いずれにせよ、「成長」させるための舵取りは別にして、「経済活動」は続けていかなけ

ればなりません。当然、そこでは気候変動に関する議論が不可欠です。経済活動そのものは、

再生可能エネルギーや電気自動車にシフトしても続けられるはずですから、その中でCO2

削減目標を達成していくとともに、どのように経済の舵取りをしていくかを議論していく

ことが大切です。すでにニュージーランドの首相のように、従来の経済成長の在り方は「悪」

だという考え方も、国際的には湧き上がりつつあります。それだけに、本当の意味で、「話

し合い」を活発化させる時期に来ていると思います。

 

―― 「再生可能エネルギー」もまた、大規模風力発電のようにスケールメリットを求めて、自然や生態系を壊すような開発が行われつつあります。そのことについて、ご意見をいただけますか? 

谷口 これについては「総論」と「各論」があると思います。総論としては、CO2の削減

につながる再生可能エネルギーを推進していくことは必須だと考えます。一方、大規模な設

備によって失われていくものがあることも事実。これは各論として、個別に対応していかな

くてはなりません。その地域で暮らす日常を壊される側の人たちにとって、そこで都会で消

費されるエネルギーが作られていくことは、理不尽だといえるでしょう。とはいえ、大規模

風力発電などに対する懸念が、再生可能エネルギーそのもにを否定してしまうことには危

惧を感じます。ここは総論と各論を分けて考え、解決を図っていくことが必要だと思います。

 

お金は無限、モノは有限というアンバランスな天秤

 

―― 気候変動の要因として、谷口さんは「人々の意識(強欲と無関心)」と「システム(お金の仕組み)」をあげられています。なかでも「お金も時間とともに価値を失えば、世界は良くなる」という言葉が印象的ですが、ご自身が考える「システムチェンジ」とは?

谷口 お金と時間の価値については、ドイツが先進的に取り組んでいます。僕がイギリスの大学を出た後にドイツに移り住んだのも、その理論と実践を学びたかったからです。「お金」というのは、ごく当たり前のように存在しているので、その仕組みについて疑問を持つ人はほとんどいないと思います。いうなれば、価値を感じる「モノ・サービス」を「お金」と交換するという仕組み。すなわち、「お金」と「モノ・サービス」は天秤秤の左右に置かれているような関係になっているわけです。ところが、その価値あるものはすべて、人間の労力(時間)と地球の資源からできています。ですから、当然、それらは無限ではなく有限です。食べ物が腐り、衣服や住まいが老朽化するように、その価値も時間とともに失われていきます。一方、お金はどうでしょうか? こちらは論理的には無限に増やすことが可能です。つまり、天秤の一方には「無限」に増やすことができるお金、もう一方には「有限」のものが載っていて、均衡が取れていない状態にあります。このアンバランスな天秤こそ、過酷な労働や貧富の格差、気候変動に象徴される資源の枯渇や砂漠化といった自然環境の悪化を招いている要因ではないでしょうか。だから、まずはこのアンバランスを是正することが、僕は大切だと思っています。「システムチェンジ」という言葉が正しいかどうかは分かりませんが、お金が時間とともに価値を失えば、搾取のメリットは少なくなります。有限な地球の資源を大切に使おう、という発想も生まれるはずです。ですから、今後もこの理論と実践に取り組んでいきたいと考えています。

 

「選挙に行こう」の原点は、当事者意識と相互理解

―― 一方で、「意識」の問題としては、1人ひとりの政治参加の観点から、谷口さんは「選挙に行こう」と訴えておられますね。

谷口 EUなどでは、選挙権を持っていない若い人たちが、主体的にデモを行っています。一方、日本では大人を含めて参政意識が乏しいことも事実。そこで「選挙」を起点にしたいと考えているわけです。選挙に行かない理由はさまざまですが、特に無関心であることを良しとする風潮が。いまの悪循環を生んでいるのだと思います。女性の問題に男性、障がい者の問題に健常者の意識変化が必要なように、実際の当事者以外が相手を理解しようとすれば、世の中は確実に変わると信じています。その突破口が選挙であり、僕は1時間話をすれば、選挙に行きたくなるような気持ちにさせる自信があります。そのポイントは、行った場合と行かない場合の状況をともに創造することだと思っています。

 

―― これまで無関心であった人でも、第三者を理解することで、社会の課題が見えてくるということですね。谷口さんは同時に「完璧より前進」という言い方をされていますが、これはどのような発想によるものですか?

谷口 最も大切なことは「思考停止しない」ということ。1人ひとりが問題意識を持つことはとても大切です。しかし、その中で「正しいこと」を限定してしまうと、そこで思考はストップしてしまいます。実は、この「完璧」な思いこそ、「前進」の障壁となってしまう可能性があるのです。というのも、「自分が正しい」と思ってしまえば、他からの異論は耳に入らなくなります。自分と似たような意見ばかりに耳を傾けるようになるはずです。ところが、「自分が正しいとは限らない」と思っていれば、さまざまな意見や考え方を尊重して、自ら問い掛け、答えを導いていくことができます。それは、成長や成功の肥やしになります。特に気候変動のような壁が大きく、複雑かつ解明されていないこともたくさんある問題に取り組んでいくためには、そういう姿勢が大事になると思って活動しています。

 

夢は1人でも多くの人の「居場所」を創ること

―― 谷口さんの夢は「学校」を創ることと伺っていますが、それは現在の学校とどこが違うのでしょうか?

谷口 「学校」という言葉は適切ではなありません。むしろ、学校に居場所を見い出せない子どもたちの居場所を創りたいと考えています。彼らは不登校児と呼ばれてしまっていますが、僕は不登校であること自体、1つの立派な選択肢であると考えています。自分自身もそう考えた時期がありましたし、兄弟たちも同じ思いを抱いていたからです。ところが多くの場合、学校に行かないとその子も親も後ろめたさを感じてしまうのが、いまの社会……。社会不適合とかドロップアウトという言葉で片付けられてしまいます。でも、彼らには教育を受ける権利があるし、社会には教育を受けさせる義務があります。なので、不登校を確かな選択肢にできるような場所が必要なのだと切に感じています。

 

―― 具体的には、フリースクールのような場所なのでしょうか?

谷口 一口にフリースクールといっても、いろいろな形態があるのでその言葉で括れるかどうかは分かりません。ただ、いまの学校に画一性が求められていることは確かで、それが強くなればなるほど、そこからはみ出してしまう子どもたちは増えてしまうでしょう。でも、はみ出した子どもたちの中に、実は日本や世界の救世主が隠れていることだってあるわけです。言葉では多様性とか、個性を尊重するということはできますが、仕組みがそうなっていなければ、それが叶うことはありません。ですから、僕が理想としている子どもたちの居場所を創るためには、まだまだ学ばなければならないことはたくさんあります。ですから、それを目指していく中で、子どもたちに限らず、居場所に悩んでいる人たちと真摯に向き合っていきたいと考えています。

 

 

 

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